FRAX®のカットオフ値と問題点

こんにちは(^ ^)

骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第45談

 

FRAX®の話題、3連チャンです。

前々回は、FRAX®の特徴を利点を中心に、前回は計算に必要な12個の危険因子について紹介をさせていただきました。

今回は、FRAX®のカットオフ値と欠点についてご紹介させていただきます。

 

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版による薬物治療開始基準の一部にFRAX®が使用されております。

下の図を見ていただきたいのですが、

脆弱性骨折がなく、骨密度がYAMの70%より大きく80%未満の場合は、FRAX®の結果で薬物を開始すべきかどうかがわかります。

そのFRAX®の結果ですが、骨折確率が15%以上であれば、薬物治療が開始となっていますね。

 

このカットオフ値の15%ですが、仮に10%とすると、ほとんどの方が治療対象となってしまい医療費増大の点で問題となるそうです。

そして、もし20%とすると、治療が必要な人を十分に拾い上げることができず、スクリーニングとしては厳しすぎる基準となるそうです。

よって、15%が至適基準になったそうですが、問題点があります。

 

FRAX®は年齢の影響を受けやすいため、80歳以上はほぼ全例で治療開始の対象となってしまいます。

よって、80歳以上に対して治療開始カットオフ値を15%とすることには問題があるということで、FRAX®に使用は40歳以上75歳未満に限定されます。

 

その他、FRAX®における欠点を何点か列挙して見ました。

 

欠点

  • 続発性骨粗鬆症の若い人に適していない
  • すべての危険因子(転倒など)が含まれているわけではない
  • 2型糖尿病患者においては骨折確率は過小評価される
  • 自国のツールがない国もある
  • 10年以内の骨折予測を示すが、期間、治療効果が評価できない
  • 大腿骨骨密度を用いる場合とBMIを代入する場合ではリスク評価が異なる

 

これらの欠点を十分に理解した上で、対象者ごとに骨折確率の解釈をすれば良いのではないかと思います。

是非皆さんも、簡単に計算できるので、試してみてください。

 

以上、骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第45談でした(^ ^)

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FRAX®の計算に必要な12の危険因子とは?

こんにちは(^ ^)

骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第44談

 

前回は簡単ではありますが、FRAX®の紹介をさせていただきました。

今回は骨折確率を算出するために必要な12の危険因子についてご紹介させていただきます。

 

以下に12の危険因子を挙げました。

 

・年齢

・性別

・体重

・身長

・骨折歴

・両親の大腿骨近位部骨折歴

・現在の喫煙

・糖質コルチコイド

・関節リウマチ

・続発性骨粗鬆症

・アルコール(1日3単位以上) 3単位→こちらを参考

・骨密度(大腿骨頸部の骨密度)

 

大腿骨頸部の骨密度はDXAによって測定された結果を入力する必要がありますが、測定ができない場合はその他の臨床危険因子のみでも計算できます。

 

骨密度以外は比較的簡単に聴取できる項目であるため、適応範囲が広いですね。

 

当院が開催した骨粗鬆症をテーマとした市民公開講座では、FRAX®の測定コーナーを設けたのですが、非常に好評で算出された骨折確率に対して様々な反応がみられました。

 

骨折や転倒に対する注意喚起を促すためにも、非常に有効な評価ツールです。

 

次回は、FRAX®のカットオフ値や問題点についてお伝えしたいと思います。

 

以上、骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第44談でした(^ ^)

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計算してみよう!あなたの今後10年間の骨折リスクは?

こんにちは(^ ^)

骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第43談

 

あなたは、今後10年間の骨折りスクはどれくらいかご存知ですか?

リスクは低いのか、それとも意外と高いのか。

気になりませんか?

 

現在、その骨折りスクを簡単に評価できる方法があるんです。

その評価ツールの名前は、FRAX®(fracture risk assessment tool)です。

フラックスと呼びます。

 

これは、2008年にWHOにより提唱されたもので、その人の今後10年間に起こると予想される骨折発生危険度が計算できます。

 

方法は、インターネットに接続し、12の危険因子を入力するだけです。

そうすると、自動的に大腿骨近位部あるいは主要骨粗鬆症性骨折の骨折確率が算出されます。

(FRAXの入力画面)

計算式は非公表ですので、机上ではできません。

以下にFRAX®の特徴を挙げました。

 

FRAX®の特徴

・世界44カ国のツールが作成されている

・各国の骨折発生率、平均余命で調整されている

・50歳以上の男性、閉経後女性に使用できる

・取り扱いが簡単である

・日常診療に適用できる

・閾値はあくまで「提案」であり治療を強制するものではない

 

各国ごとに計算式を調整されているのは大きな特徴ですよね。もちろん日本版も作成されています。

 

また、日常診療での取り扱いが簡単で、病院の待ち時間のうちに患者さんに必要項目を記入していただき、病院職員が骨折確率を算出してから、診察を受けるといった方法をとっている病院もあるそうです。

 

私も使用しておりますが、非常に簡単ですぐに算出することができます。

 

次回は、計算に必要な12の危険因子についてお話をさせていただきます。

 

以上、骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第43談でした(^ ^)

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公開講座でお話をしてきました

こんにちは(^ ^)

骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第39談

 

今日は、「骨粗鬆症に関する公開講座」にてお話する機会をいただきまして、熱く語ってきました(^ ^)

 

私のお話のテーマは、「実践!骨粗鬆症のセルフチェックと予防運動」としました。

骨粗鬆症に関する疫学や深い知識にはあまり触れずに、骨粗鬆症の早期発見と早期予防・治療に繋げていただくために、「骨粗鬆症になりやすい人の特徴」と「簡単に行える自己チェック」、「今からできる予防運動」についてお話をさせていただきました。

骨粗鬆症は“沈黙の疾患”とも言われており、気づかないうちに骨強度は低下し、骨折して初めて骨粗鬆症であったことを知るケースは多く見られます(場合によっては、骨折しても気づかないことも。。。)

 

骨粗鬆症性骨折の一つである大腿骨近位部骨折の5年生存率は、がんの5年生存率よりも低いと言われており、骨粗鬆症を軽視していると非常に重篤な状態になりかねません。

 

今日のお話で少しでも骨粗鬆症の検診率の向上と、治療率の向上に寄与できればと思います(^◇^)

 

以上、骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第39談でした(^ ^)

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骨粗鬆症に関する公開講座のお知らせ

こんにちは(^ ^)

骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第38談

 

今回は、今週6日(木)の公開講座のご案内です。

私は理学療法士の立場から、骨粗鬆症のセルフチェックと骨粗鬆症の予防のための運動についてお話をさせていただきます。

 

なぜか、パンフレットを見るとトリになっており若干プレッシャーを感じておりますが、骨粗鬆症マネージャーの責務・任務を果たしたいと思います。

 

昨年から様々な方より骨粗鬆症に関する講演のご依頼をいただき、ご縁を感じます。

 

このご縁を一つずつ大切にしたいと思います( ◠‿◠ )

 

以上、骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第38談でした(^ ^)

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すぐできる!ビタミンK自己チェック

こんにちは(^ ^)

骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第29談

 

前回よりビタミンKを取り上げてお話をしておりますが、今回はみなさんのビタミンKの摂取が十分な量なのか簡単なチェックをしたいと思います。

 

チェックは本当に簡単です。

納豆と野菜の摂取状況を確認するだけでできるんです。

以下の表の通りに点数をつけて見てください。

(骨粗鬆症の予防と治療のガイドラインより抜粋)

 

恥ずかしながら、私は十分な摂取ができていませんでした。

皆さんはいかがでしたか?

 

次回は、ビタミンKが多く含まれる食材についてお伝えできればと思います。

 

以上、骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第29談 でした(^ ^)

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やってみよう!カルシウム摂取量チェック!

こんにちは(^ ^)

 

骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第19談

 

前回は、「1日に必要なカルシウム量」についてお伝えしました。

 

では、今回は摂取量の自己チェックをしてみましょう!

 

以下の表は、骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインから引用したものです。

10項目の質問に対して摂取状況をチェックしていきます。

みなさんも是非やってみてください。

 

最後に合計点を算出しますが、何点になりましたか?

その点数を使って摂取状況を判定します。

これが判定表です。

私もやってみましたが、自分では食べているなって思う時でも足りていませんでした、、、。しかも思った以上に、、、。

 

骨粗鬆症マネージャーでありながら、なんと恥ずかしい、、、。

食生活を見直さないといけないですね。

 

このように自己チェックをして、「骨のために食生活を変えていこうかな」って思うきっかけを作ることが大事だと思います。

 

ただ、「カルシウムを摂りなさい」と言われてもピンとこない方は多いですが、自己チェックをすることで意外と危機感を覚える方は多いと思います。

 

また、成長期のお子さんがおられる方は、自分だけでなく子供の食生活も見直すチャンスです!

 

次回は、どのような食品に多くカルシウムが含まれているのかについてお伝えしたいと思います。

 

以上、骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第19談 でした(^ ^)

かんたん骨粗鬆症チェック!その4「年齢と体重だけでできる骨粗鬆症チェック」

こんにちは( ◠‿◠ )

 

骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第13談

 

“かんたん骨粗鬆症チェック”シリーズ も、もうその4になりました。

 

その1の「壁に頭がつくか」その2の「肋骨と骨盤の距離」その3の「身長低下」

に続いて、今回は、「年齢と体重だけでできる簡単チェック」です

 

骨粗鬆症のスクリーニング検査として、用いられているもので、

名称はFOSTA Score(フォスタ スコア)といいます。

 

今回は、計算が必要ですが、簡単ですので皆さんもやってみてください。

 

計算式は、

FOSTA Score =(体重 – 年齢)× 0.2  です

 

まず、体重から年齢を引いてください。

そして、次に0.2をかけてください。

 

どんな値になりましたか? この値を使って判断します。

 

以下のように骨粗鬆症リスクを「低」、「中」、「高」の3つに分類することができます。

 

“ −1 ”よりも大きい : 骨粗鬆症リスクは低いです。

“ −1 ”よりも小さいが、“ –4 ”よりは大きい : 骨粗鬆症リスクはです。

“ –4 ”よりも大きい : 骨粗鬆症リスクは高いです。

 

計算が苦手な方や、面倒な方は下の表で簡単に判断できますので、参考にしてください。

一度、小生の年齢と体重でやってみましょう。

小生は36歳の57kgです。

 

FOSTA Score =(57 – 36)× 0.2

算出された値は、4.2です。

 

−1より値は大きいので、リスクは低いことになります。

 

ただ、小生を例にしましたが、誤りがあります。

このチェックは男性には適応されていません。

 

そもそも、このチェックはアジア人女性を対象に開発されたものだからです。

 

ですので、女性に対して使用するようにしてください。

 

FOSTA scoreの目的は、骨粗鬆症への関心を高め、骨粗鬆症のリスクが高い人を判別し、骨量測定につなげることです。

 

高リスク(−4)の感度は高く、91%といわれています。

 

また、骨粗鬆症診断歴のなかった閉経後女性の21%が新たに骨粗鬆症と診断されたともいわれています。

 

骨粗鬆症検診に誘導するためだけでなく、自分自身でもできるチェックなので、幅広く使用していただければと思います。

 

以上、骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第13談 でした(^ ^)

かんたん骨粗鬆症チェック!その3「背は低くなっていませんか?」

こんにちはo(`ω´ )o

 

骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第12談

 

昨年末から、シリーズでお伝えしている”かんたん骨粗鬆症チェック”の続きを

年をまたいでやっていきたいと思います。

 

その1の「壁に頭がつくか」その2の「肋骨と骨盤の距離」に続いて、

今回は、その3「身長の低下と骨粗鬆症の関係」についてお伝えしたいと思います。

 

背が低くなると、骨粗鬆症の危険性があるのか?

背が低くなっていると、椎体骨折を起こしているのか?

 

報告はいくつかあります。

 

以下の表は、「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年」に掲載されているものを引用しています。

既存骨折のない75歳以上の女性を対象とした報告では、             3cm以上の身長低下と低骨密度の関係性はなかった(Dargent-Molina et al. Osteoporos Int 2000; 11: 881-8)としていますが、ほとんどの報告で関係性があるといわれています。

 

じゃあ、何センチ背が低くなると、どれくらい危険なのかってことになりますね。

 

それは報告によってバラバラのようです。

例えば、

閉経後3年の身長低下が2cmあると、椎体骨折のリスクは13.5倍、4cm以上になると20.6倍になるという報告があります(Siminoski K, et al. Osteoporos Int 2005; 16: 403-10)

 

その他には、25歳の時からの身長の低下が4cm以上では、椎体骨折の危険性が2.8倍というものもあります(Vogt TM, et al. Mayo Clin Proc 2000; 75: 888-96)

 

「背なんて、年をとったらみんな小さくなるやん!」

って思う人は多いんじゃないでしょうか?

 

そうです。それは何も間違っていません。

 

年をとると、背が低くなりやすくなります。

それが、骨粗鬆症なんです!

 

年をとると背が低くなってくるのは仕方がないこと(老化)で済ませてはいけません。

 

× 加齢→背が低くなる

○ 加齢→骨粗鬆症→背が低くなる

 

椎体骨折は、様々な内科的な問題を引き起こす可能性もありますし、次の骨折を招く恐れが大いにあります。

 

背が低くなってきたと感じる方、または身近の方で背が低くなったと思われる方がおられたら、ぜひ骨粗鬆症検診を勧めてください。

 

でも、自分の背が低くなったと気づく方は少ないようです。

 

こんな興味深いものもあります。

60歳以上の閉経後女性を対象とした研究で、自己申告した身長と実際に測定した身長に4.5cmもの差があったとのことです。

また、その差が3cm以上もある方は、既存椎体骨折の危険性が1.49倍であったそうです(Briot K, et al. CMAJ 2010; 182:
558-62. )

 

“身長低下と骨粗鬆症“

 

ぜひ覚えておいてください。

 

このように、今年も骨粗鬆症マネージャーとしての役割を果たすべく、活発に更新していきます。

 

次回は、“かんたん骨粗鬆症チェック”シリーズ その4です。

 

以上、骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第12談 でした(^ ^)

かんたん骨粗鬆症チェック!その2「肋骨と骨盤の距離は?」

こんにちはo(`ω´ )o

 

骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第12談

 

今年も今日を入れて残りも3日になりましたね。

年賀状も作らずにブログを更新しています。

今夜にでも年賀状のデザインを考えようと思っています。

 

さて、本題に戻りますね。

前回から始まった “かんたん骨粗鬆症チェック”シリーズ

 

その1は、「壁に頭がつきますか?」でした。

 

今回は、その2「肋骨と骨盤の距離は?」です。

 

では、下の図を見ながら説明しますね。

(Reproduced from JAMA 2004;292:2890-900 with permission of the American Medical Association)

 

このチェックの名称は、肋骨—骨盤間距離といいます。

「そのままやんけ!」と言わないでくださいね(^◇^;)

 

この方法は、一人ではできません。誰か協力してもらえる人が必要です。

 

まず立位になります。

そして、後ろから肋骨と骨盤の間に手を入れます。

肋骨と骨盤の間に指が何本入るでしょうか?

 

2本も入らない場合は危険です!

胸椎の椎体骨折が存在する可能性が高いそうです。

 

781例の骨粗鬆症外来に通院する女性患者を対象にすると、この方法は感度88%、特異度が46%であったと報告されています。

(Reproduced from JAMA 2004;292:2890-900 with permission of the American Medical Association)

 

前回も述べましたが、椎体骨折は3人に2人は無症状であるといわれています。

転けたこともないし、痛くもない、

でも、いつのまにか骨折をしています。

 

一度、肋骨と骨盤の距離を測ってみてください。

 

年の瀬ですが、骨粗鬆症マネージャーの活動はどんどん続けていきます。

 

次回は、“かんたん骨粗鬆症チェック”シリーズ その3です。

 

以上、骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第12談 でした(^ ^)