再入院率は1.5倍! 認知症を伴う大腿骨近位部骨折症例の現実

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こんにちは(^ ^)

骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第71談

 

先日新聞の1面に注目すべき記事が掲載されておりました。

それは、高齢で認知症を患っていると、退院して間もなく同じ病気やけがで再入院するリスクが約1.5倍に高まるという調査結果を医療経済研究機構や国立がん研究センターなどのチームが発表したとのことでした。

 

全国987病院に入院した65歳以上の患者183万人の退院後30日以内に再入院した割合を認知症を患う27万人と認知症ではない156万人で比べたそうです。

 

その結果、認知症の人が自宅や介護施設に戻ってから再入院するリスクは、大腿骨近位部骨折では1.46倍であったそうです。

これは、脳梗塞の1.30倍、誤嚥性肺炎の1.23倍よりもリスクが高い結果でした。

 

そして、このリスクは認知症の程度が異なってもその傾向は変わらなかったそうです。

 

臨床で大腿骨近位部骨折症例のリハビリを担当しているものとして同感です。

 

大腿骨近位部骨折は、身体機能の改善に難渋する骨折の一つです。

認知症を伴っていると環境の変化による認知症の進行やリハビリ意欲の減弱などから十分な身体機能の改善が図れないことを多く経験します。

 

そして、退院後に再転倒して、反対側の同じ骨折を起こし再入院する。

 

この再骨折(骨折連鎖)は、私が骨粗鬆症マネージャーを取得して、骨粗鬆症リエゾンサービス(OLS)を行うきっかけとなった事案です。

 

「再骨折(骨折連鎖)を予防したい!」

 

そのためには、骨粗鬆症薬は必須であり、また栄養や運動の介入も重要です。

しかし、認知症を伴う方は、服薬管理など自分ではできないことが多くなってきます。

 

そのような場合には、周囲の方々の協力は欠かせません。

 

骨折の予防は一人で行うのではなく、家族、メディカルスタッフ、施設スタッフ、近隣の方々が力を合わせて行う必要があります。

 

要支援・要介護が必要となった原因として最新の平成28年の報告では、認知症は18.0%で脳血管疾患を抜いて第1位となり、骨折・転倒は12.1%と調査毎に増加しています。

 

今回のこの記事は今後のOLSの活動において、参考となる非常に興味深かいものでした。

ちなみに、この論文は米国老年医学会雑誌電子版に掲載されているそうです。

 

以上、骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第71談でした(^ ^)

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引用:https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180221-OYTET50012/

FRAX®のカットオフ値と問題点

こんにちは(^ ^)

骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第45談

 

FRAX®の話題、3連チャンです。

前々回は、FRAX®の特徴を利点を中心に、前回は計算に必要な12個の危険因子について紹介をさせていただきました。

今回は、FRAX®のカットオフ値と欠点についてご紹介させていただきます。

 

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版による薬物治療開始基準の一部にFRAX®が使用されております。

下の図を見ていただきたいのですが、

脆弱性骨折がなく、骨密度がYAMの70%より大きく80%未満の場合は、FRAX®の結果で薬物を開始すべきかどうかがわかります。

そのFRAX®の結果ですが、骨折確率が15%以上であれば、薬物治療が開始となっていますね。

 

このカットオフ値の15%ですが、仮に10%とすると、ほとんどの方が治療対象となってしまい医療費増大の点で問題となるそうです。

そして、もし20%とすると、治療が必要な人を十分に拾い上げることができず、スクリーニングとしては厳しすぎる基準となるそうです。

よって、15%が至適基準になったそうですが、問題点があります。

 

FRAX®は年齢の影響を受けやすいため、80歳以上はほぼ全例で治療開始の対象となってしまいます。

よって、80歳以上に対して治療開始カットオフ値を15%とすることには問題があるということで、FRAX®に使用は40歳以上75歳未満に限定されます。

 

その他、FRAX®における欠点を何点か列挙して見ました。

 

欠点

  • 続発性骨粗鬆症の若い人に適していない
  • すべての危険因子(転倒など)が含まれているわけではない
  • 2型糖尿病患者においては骨折確率は過小評価される
  • 自国のツールがない国もある
  • 10年以内の骨折予測を示すが、期間、治療効果が評価できない
  • 大腿骨骨密度を用いる場合とBMIを代入する場合ではリスク評価が異なる

 

これらの欠点を十分に理解した上で、対象者ごとに骨折確率の解釈をすれば良いのではないかと思います。

是非皆さんも、簡単に計算できるので、試してみてください。

 

以上、骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第45談でした(^ ^)

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FRAX®の計算に必要な12の危険因子とは?

こんにちは(^ ^)

骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第44談

 

前回は簡単ではありますが、FRAX®の紹介をさせていただきました。

今回は骨折確率を算出するために必要な12の危険因子についてご紹介させていただきます。

 

以下に12の危険因子を挙げました。

 

・年齢

・性別

・体重

・身長

・骨折歴

・両親の大腿骨近位部骨折歴

・現在の喫煙

・糖質コルチコイド

・関節リウマチ

・続発性骨粗鬆症

・アルコール(1日3単位以上) 3単位→こちらを参考

・骨密度(大腿骨頸部の骨密度)

 

大腿骨頸部の骨密度はDXAによって測定された結果を入力する必要がありますが、測定ができない場合はその他の臨床危険因子のみでも計算できます。

 

骨密度以外は比較的簡単に聴取できる項目であるため、適応範囲が広いですね。

 

当院が開催した骨粗鬆症をテーマとした市民公開講座では、FRAX®の測定コーナーを設けたのですが、非常に好評で算出された骨折確率に対して様々な反応がみられました。

 

骨折や転倒に対する注意喚起を促すためにも、非常に有効な評価ツールです。

 

次回は、FRAX®のカットオフ値や問題点についてお伝えしたいと思います。

 

以上、骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第44談でした(^ ^)

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計算してみよう!あなたの今後10年間の骨折リスクは?

こんにちは(^ ^)

骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第43談

 

あなたは、今後10年間の骨折りスクはどれくらいかご存知ですか?

リスクは低いのか、それとも意外と高いのか。

気になりませんか?

 

現在、その骨折りスクを簡単に評価できる方法があるんです。

その評価ツールの名前は、FRAX®(fracture risk assessment tool)です。

フラックスと呼びます。

 

これは、2008年にWHOにより提唱されたもので、その人の今後10年間に起こると予想される骨折発生危険度が計算できます。

 

方法は、インターネットに接続し、12の危険因子を入力するだけです。

そうすると、自動的に大腿骨近位部あるいは主要骨粗鬆症性骨折の骨折確率が算出されます。

(FRAXの入力画面)

計算式は非公表ですので、机上ではできません。

以下にFRAX®の特徴を挙げました。

 

FRAX®の特徴

・世界44カ国のツールが作成されている

・各国の骨折発生率、平均余命で調整されている

・50歳以上の男性、閉経後女性に使用できる

・取り扱いが簡単である

・日常診療に適用できる

・閾値はあくまで「提案」であり治療を強制するものではない

 

各国ごとに計算式を調整されているのは大きな特徴ですよね。もちろん日本版も作成されています。

 

また、日常診療での取り扱いが簡単で、病院の待ち時間のうちに患者さんに必要項目を記入していただき、病院職員が骨折確率を算出してから、診察を受けるといった方法をとっている病院もあるそうです。

 

私も使用しておりますが、非常に簡単ですぐに算出することができます。

 

次回は、計算に必要な12の危険因子についてお話をさせていただきます。

 

以上、骨粗鬆症マネージャーが教える!骨折予防に必要なこと 第43談でした(^ ^)

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